「国際金融市場から見た国際情勢」
現行の世界秩序は、法律、言語、通貨、会計基準、ものづくりの制度など、すべて英米が構築したものであり、これに挑戦状を突き付けているのが中国だ。世界で5人に1人が中国語を話し、中央アジア、東南アジア、中東で人民元経済圏は拡大しており、デジタル人民元をも広めようとする中国の動きに国際金融筋は警戒を強めている。実態経済の交流が深い東南アジアを皮切りにデジタル人民元の導入が進めば、将来的に人民元が基軸通貨化されていく可能性は十分にある。米ロが共同で宇宙ステーションを建設したのに対し、中国は単独で完成させたのをはじめ、火星の調査など、宇宙開発の分野でも目覚ましい進歩を遂げ、「制宙権」確保に向けての存在感も増している。
米国は中国に対し、厳しい姿勢を示しているが、本音では文民・習近平とは取引したいと考えており、それは英仏独も同様だ。ただ、習近平の背後でRCEPに続き、TPP加盟によって中国主導の経済圏づくりを急ぐ人民解放軍の動きには警戒すべき。
日本は中国とうまく渡りあっていくべきであり、日本がどういう立ち位置を取るべきか、国も企業も個人も考えていく時代になった。
銀行出身で東アジア地域経済と国際金融を専門とする真田氏は、水面下で繰り広げられている米中の通貨覇権争いの詳細について解説。恒大集団の過剰債務問題の本質、対中包囲網でつくられていたはずのTPPが中国の乗っ取りによって対米包囲網に作り替えられようとしている現状、ユニクロが新疆ウイグル自治区からの綿製品調達で問題視されている背景、日米をはじめとする宇宙軍創設の動きなどについても言及した。その後の質疑応答では、脱炭素社会、米の中間選挙などについても質問が及び、活発なやり取りが行われた。真田氏は、「人民解放軍が共産主義回帰に動き始め、一帯一路を踏み台に世界に中国のルールを浸透させる動きを加速させている。米中の覇権争いは最終的には中国が勝つ可能性がある」との見方を示した。